上り調整の手順について、具体的にご説明します。
CMがDOCSISの下り信号をロックして、SYNC/UCDメッセージを受信すると、次に上り信号の調整をする状態になります。
上り調整するためにCMは信号を送信したい訳ですが、CMTSから送信するタイミングを知らせるMAPメッセージを受信します。このMAPメッセージによって、CMはいつのタイミングで信号を送信できるかを把握します。
次のプロセスが初期レンジング(Initial Ranging)といって、最初にCMからCMTSに対して最小の出力レベルでレンジング要求(RNG-REQ)を送信します。CMのレンジング要求をCMTSが受信するとが出来たら、CMTSはCMに対してレンジング応答(RNG-RSP)を返信します。CMは下り信号でCMTSからの応答を待ちます。
もし、CMTSからのレンジング応答がなかった場合は、CMは送信出力を増やして再びレンジング要求を送信します。CMTSからのレンジング応答を受信できるように、CMは繰り返してきます。
初期レンジングは、CMが大雑把に送信した信号ですので、その信号の状態をCMTSが判断して、調整パラメータによってCMへ指示します。調整パラメータは、CMTSから送信されるレンジング応答によって伝達され、RF調整の指示内容は次のようなものがあります。
- 送信パワー
- タイミング
- 送信周波数
これらの調整パラーメータを反映させた信号をCMが送信することで、CMから送信するデータを正しくCMTSが受信できる状態となります。
なお、レンジングプロセスは、これ以降も継続して周期的に実施され、パワー・タイミング・周波数等のCM送信パラメータを常に調整します。
この周期的に行われるレンジングプロセスが、周期レンジング(Periodic Ranging)で、CMとCMTS間のDOCSIS通信を安定して維持することを目的とします。
もし、レンジングプロセスが完了できなかった場合は諦めて、他の下り信号を見つけるためにスキャンプロセスに戻ります。
周期レンジングにおいても同様で、一定期間・回数でレンジングが失敗した場合は、CMはリンクダウンします。
初期レンジングのCMがレンジング要求するタイミングは、「衝突(コンテンション)」ウィンドウの間に行われます。したがって、例えば一斉にCMが起動するような状況になった場合(たとえば停電あるいはセンター設備メンテナンス作業)に、複数のCMが衝突ウィンドウでレンジング要求を送信しますので、互いに干渉して衝突を引き起こす可能性があります。衝突ウィンドウで輻輳するような状況を回避する仕組みとして、バックオフ機能が準備されています。