DOCSIS規格の変遷 1.0→1.1→2.0→3.0→3.1

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1997年 DOCSIS規格が「DOCSIS1.0」として誕生してから、1.0から1.1→2.0→3.0、そして現在の3.1という経過をたどっています。20数年という長い年月が経過しましたが、まだ規格は続います。

今回は、各DOCSISバージョンの違いについて、ご説明します。

DOCSIS1.0 初登場

米国のCableLabsにより、最初の「DOCSIS1.0」を策定しました。
DOCSIS登場する前は、ベンダー毎に独自方式だったケーブルモデムシステムが、仕様が決まったことで、センター装置CMTSと端末装置CMの相互接続性が実現できました。

・最大速度 下り42.884Mbps、上り10.24Mbps
・ベストエフォート型通信(Best Effort)
・BPI(ベースラインプライバシー)
下りは、帯域幅6MHz固定で、変調方式64QAM/256QAMです。
上りは、帯域幅200/400/800/1600/3200kHzの5段階で、変調方式QPSK/16QAMです。
ベストエフォート型通信は、ユーザが少なくて空いている時は良いパフォーマンスなのですが、ユーザが多くなってきて混雑すると遅くなってしまいます。D1.0でも、CM毎にCMコンフィグレーションファイルによって、最大データ速度を決めることができたので、当時の主流であった「ダイアルアップ接続」と同程度あるいはそれ以上の約64~256kbps程度を設定していました。
CableLabs
米国のCableLabsは、ケーブルテレビ事業者によって1988年に設立された非営利のケーブルテレビに関する研究所です。「一般社団法人日本ケーブルラボ」という組織が日本にありますが、同じ系列の組織ではありません。しかしながら、両者は提携関係にはあります。

DOCSIS1.1 QoS

D1.0が登場してから、すぐにQoS(Quality of Service)を追加したDOCSIS1.1が、1999年に公開されました。この時期は、インターネット上で音声トラフィックを扱うVoIP技術が登場してきましたので、音声が途切れないようにするためにQoS機能を使って、データと音声の統合を目指しました。

また、D1.1はD1.0に対して、後方互換性がありましたので、D1.0 CMはD1.1 CMTSに対しての接続性は確保されました。

・最大伝送速度 D1.0と同じ
・帯域保証型のQoS
・BPI+(ベースラインプライバシープラス)

DOCSIS2.0 上り高速化

次のバージョンDOCSIS2.0は、2001年に公開されました。
この時期は、Napstorや日本国内だとWinny等のファイル共有、いわゆるP2Pの全盛期です。よって、ファイル交換のために上り速度が早いことが非常に望まれた時期です。さらに、一気に普及した電話線を利用したADSLサービスは、幸いに上り速度が遅かったこともあって、DOCSIS優位性のひとつでした。

上りアクセス制御方式に、S-CDMA(Synchronous-Code Division Multiple Access)が追加されました。
上り帯域幅は、これまでの200/400/800/1600/3200kHzに加えて、6400kHz(=6.4MHz)も追加され、上り変調方式は、TDMAの場合に、QPSK/16QAMに加えて、8QAMと32QAM/64QAMが追加しました。

・最大伝送速度 下りはD1.xと同じ、上り30.72Mbps
・上りアクセス制御方式S-CDMAの追加
・上り帯域幅、変調方式の追加

DOCSIS3.0 チャンネルボンディング

2006年にDOCSIS3.0が仕様公開されました。

下り・上りのさらなる速度向上のために、新しい技術「チャンネルボンディング」(Channel Bonding)を採用して高速化を図りました。
チャネルボンディングとは、複数のチャンネルを束ねて高速化することを言います。例としてあげますと、下り1ch当たり約40Mbps(256QAM)を8chボンディングすると、40Mbps/ch×8ch=320Mbpsとなります。上りも同様に、1ch当たり約30Mbps(64QAM/6.4MHz)を4chでは、30Mbps/ch×4ch=120Mbpsです。

・最大伝送速度 下り約320Mbps(※8chの場合)、上り約120Mbps(※4chの場合)
・IPv6サポート

DOCSIS3.1 新たなPHY

DOCSIS3.1は、現在のDOCSISにおいて最新の仕様です。

FTTH方式に対抗するために、効率よく高速化するために、D3.1ではOFDM、LDPC等の様々な技術を採用して、大幅に仕様を変更しました。
2013年仕様公開され、CMTS/CM製品リリースもされて、導入が進んでいる状況です。

DOCSIS3.1については、別のパートでご説明します。